言論空間ぼんど

文学からプログラミングまであれこれ語る場

泣いてよし笑ってよし、見てよし聞いてよし!~「宇宙よりも遠い場所」を全力で語る。

新学期の爽やかな風を感じさせながら、

2018年最初の1クール、冬アニメが終わりを迎えました。

 

この時点で今年のNo.1と声高に叫びたいのが「宇宙よりも遠い場所」!

 

リアルもネットも問わず、最近は私はやたらとこの作品の布教活動に勤しんでいるわけです。

言葉が溢れかえって仕方ないので、いっそここでぶちまけます。

 

普段やってるオススメ話ではなく、

がんがん本編に触れて語るつもりなので、

まだ見てない人は先にご視聴の程を!

 

 

 

 

僕と「よりもい」の出会い

最初に目を惹かれたのはやはり「南極を目指す」というコンセプト。

非日常を覗き込みたいという知的好奇心から、僕はこのアニメに興味を持った。

 

作中では期待以上に南極についての情報が盛りだくさんで、

当初の欲求は毎回満たされていた。

 

漠然と「部活もの」に近い、熱血!青春!な匂いもあり、

それなりに面白かったらいいなくらいの気持ちで毎週見ていた。

 

そう!

最初はここまで化けるとは想像もしておらなかったのです!

 

次からはお話を最初から追う形で語っていきます。

 

1~4話:仲間たちといざ行かん南極!

1話では、「なんか青春したい」と漠然とした思いを抱くキマリちゃんと、

本気で南極を目指そうと100万円(しゃくまんえん)もの大金を貯めた報瀬ちゃんの出会いが描かれます。

 

それを見てる間ずっと、僕は「けいおん!」の第1話が頭から離れなかった。

1話の感想としてはすいません。

 

始まりは実にオーソドックスな、それこそ前述した「部活もの」の始まりでした。

特筆すべき点は特にないです。

 

しかし物語序盤の仲間たちと出会う場面というのは、

往々にしてわくわくさせられるもので。

 

仲間たちが集まる様子と「南極」にまつわる蘊蓄がモチベーションとなり見続けていました。

 

5話:すべてを決めためぐっちゃんの一言

”このアニメは化けるかもしれない”

視聴態度を改めざるを得なかった第5話「Dear my friend

 

いよいよ南極行きを決め、明確な意思と共にキマリちゃんが旅立ちます。

クライマックスです。

友人との感動の別れが描かれる”であろうはず”の時間帯。

めぐっちゃんがやってくれました。

 

「絶交しようと思う」

 

思えば不穏な雰囲気が漂う話ではあったが、

そう来たかと。

 

この展開は普通Aパートの終わりにやるだろ!

CM明けて、悩むキマリからめぐっちゃんとの和解がBパートに引き継がれるだろ!

 

しかし違いました。

「よりもい」はクライマックスの短い時間に友達との絶交(お別れではなく)を描いた。

めぐっちゃんのこれまでの葛藤がキマリちゃんにぶつけられ、

当然キマリちゃんも当然戸惑います。「なんで!」って。

 

しかしキマリちゃんは胸を張って南極へと向かうのです。

 

第5話は自立するキマリちゃんを描くと同時に、めぐっちゃんの自立(ある意味親離れ的な)をも描く肉厚な話でした。

 

全話通して思うところなのですが、

この作品の主人公は誰かと言われると、もう登場人物全員と答えるしかありません。

 

南極へ行く原動力になった報瀬ちゃんの物語であることはもちろん、

そんな彼女に魅せられたキマリちゃんの物語でもある。

結月ちゃんのぼっち卒業物語でもあるし、日向ちゃんの過去との決別でもある。

そして南極の人たちの非日常で愉快な日常がある(儚い恋も!)

 

それぞれの細部を深く描くきめ細やかさと、成長物語としての大きな竜骨を備えたところがやはりこのアニメのすごいところでしょう。

 

しかも、この第5話エピソードは最終話の巧妙な伏線ともなっているのですよね(この件は後述)。

 

6~11話:南極航路、深みを増す笑いとドラマ

南極へと出発すると、俄然面白みが増してきます。

きれいなくらい右肩上がりに盛り上がっていきます。

 

シンガポールでのパスポート紛失未遂(!)事件は、

コメディのテンプレに則りながら登場人物たちの魅力を生かして描きます(頑固な報瀬ちゃんがいいよね!)。

 

船酔いと作業と訓練に苦しむ四人が見た荒々しい太平洋!

デッキへ飛び出した時の高揚感が忘れられません。

 

そして南極到達、その第一声「ざまぁみろ!」

これほど痛快に笑えて感動できるセリフはないですよ!

 

さて4人の女子高生たちに目を向ければ、

結月ちゃんの友達エピソードがこれまたおかしくて泣ける話だった(第10話「パーシャル友情」)

これ以降、結月ちゃんが事あるごとに「友達」というワードに反応するのがすごく面白い。

 

そして報瀬ちゃんの率直な物言いが光る、第11話「ドラム缶でぶっ飛ばせ!」

 

僕ね、普段は気丈に明るく振る舞う女の子が、過去に抱える闇に苦しみ、その闇から解放されるって話が大好きなんですよ。

リトバスの三枝さんとかワンピースのナミとか)

 

よりもいの日向ちゃんはまさにそこにハマった人物でした!

さらには報瀬ちゃんの援護射撃が最高にスカッとする!

 

ここまでの時点で、毎週のように僕は「宇宙よりも遠い場所」を絶賛していました。

けれども「たぶんこのアニメは僕だけが楽しんでいるのかもしれない」という思いがどうにも拭えませんでした(過去にそういうアニメいっぱいあったから、、)。

 

それらの諦めを全力を吹き飛ばしてくれたのが第12話!

最終回でないにも関わらず、サブタイトルはずばり「宇宙よりも遠い場所

 

12話:神懸った構成と描写~報瀬ちゃんと”Dear お母さん”

 

視聴直後の僕のツイートを引用しましたが尋常じゃない感動でした。

 

この話が決定的だったのは、開始1分で空気を作り上げてしまったところ。

 

これまでの序盤のパターンといえば、

南極生活のドタバタが面白おかしく描かれる中、徐々に話の中心となる人物に焦点があてられる、という形をとっていました。

 

しかし第12話では、はじめから報瀬ちゃんとお母さんに、それも異様な静けさと共にフォーカスがあてられます。

 

この話は細かく語るべきでしょう。

 

南極探検は大詰めを迎え、いよいよ母が消息を絶った場所へと向かうこととなりました。

当然、報瀬ちゃんとしては複雑な思いです。同行することにどうも消極的な態度でいます。

 

ここでいかなる形で報瀬ちゃんはその場所へ向かうことを決めたのか。

その描写が秀逸でした。

 

お金を数えるのです。

それも、一万円札を一枚置く毎に、この大金を貯めるまでに経験したであろうアルバイトの内容をつぶやきます。

 

胸を掴まれました。

普通、適当な回想シーンを挟みませんか? 絵を使い回すならコスト的にも正解じゃないですか。

「南極への思い」という感傷的な事象を、あえて金の勘定という即物的な方法で描いたわけです。

そのおかげで、報瀬ちゃん特有の泥臭さがにじみ出ているように思えます。

過去の話を遡っても、この作品の魅力はこういう「王道の外し方」にあるのでしょう。

 

さて、報瀬ちゃんの心も決まり、一同探検に向けて準備にかかりました。

 

現地到着と共にその自然の豊かさに驚かされます。

太陽柱」の神秘的な光に対して、報瀬ちゃんはこの光景を母も見たのかと問いかけます。

「見てたよ」という返答に対して、イマイチしっくりこない様子。

開始1分で語られた「醒めない夢」を見る報瀬ちゃんの姿がここでも描かれます。

 

この話では、報瀬ちゃんは徹頭徹尾浮かない顔で描かれています。

隊長の「小淵沢天文台」に涙する様子にも同様の釣れない反応を示します。

ラストシーンを劇的に描くための演出であるのは間違いないです。このもやもやとした感じに、見ている側としても感じ入ってしまうところがありました

 

そんな報瀬ちゃんの様子に最初に胸を打たれたのは、キマリちゃんはじめ残りの仲間でした。

 

お母さんの残したものを探そう!

「見つかるわけないでしょ」という報瀬ちゃん

 

メタな発言を許してもらえれば「見つかるに決まってるじゃないか! 何かしらの母縁の品が見つかって大団円ってのがフィクションの王道だろう?!」

 

ここでもう一度僕のツイートを引用させていただきます。

 

笑いにも通じるが、「定番」の泣けるもあれば「想定外」の泣けるも必要だと私は思うのです。

 

このエピソードについてはあらゆる手段で泣きへの手綱を握られていた節があり、

いとも容易く「定番」の方で泣いてしまったのだけど。

 

ここで終わったら、それはそれなりの話でしかありませんでした。

 

みんな納得のメール受信の場面!

想定外というか、報瀬ちゃんによる雰囲気作りのためだけのモノローグだと思っていたものが、ここで利用されるとは!

 

前半「南極への思い」を、報瀬ちゃん自らの行為を思わせることで泥臭く描きました。

ここでも「南極への思い(=母への思い)」が、当然ながら報瀬ちゃん自身の行為(メールを送信したという)によって描かれるのです。

 

この感動は、単純な母子の再会によるものではなく、報瀬ちゃん自身のこれまでの努力が、尋常でないが故に尋常でない形で表出した結果なのではないでしょうか。

 

 

ここまで言語化してまだ胸にわだかまる感動の残滓があるのですが、次へ行きましょう。

最終話も申し分なく、そして意想外に良かったのですから。

 

13話:文句なしの大団円、と思いきや想像以上の大オチ!

先ほど「定番」のクライマックスと「想定外」のオチという話をした。

この話が、最終回がまさにそうでした!

 

まぁ前話であれだけのことをされたので、それなりに涙腺が緩みまくってます。

それを差し引いてもいい終わりを迎えるのか。それだけが私の懸念でした。

 

最後の南極滞在の日。

愉快な仲間たちとソフトボールに講じたり、別れのドタバタがあったり、そして報瀬ちゃんの”いい話”があったり、それなりに見どころの多い展開です。

 

私事で恐縮なのですが、僕は会社の新人研修でインドに3か月ほど滞在しました。

この最終話を見てどうしてもその時のことを思い出さざるを得なかったので以下ツイート

 旅情を語る上でも、心にぐっとくる作品なのです。

 

さて、話はクライマックスに進みましょう。

 

キマリちゃんたっても希望である「オーロラを見たい」ということが叶わず、一同砕氷船で帰路に。

 

その船上、最後のリポートを、とカメラを回すもその頭上に念願のオーロラが!

 

時を同じくして、南極に残った隊長は報瀬ちゃんから預かった母のPCに1件の未送信メールがあることに気づく(この描写が12話ですでにあったのが憎い!)。

隊長は気を利かせてそのメールを報瀬ちゃんへ送信した。

 

そしてオーロラの下にいる報瀬ちゃん。

メールにはオーロラの画像と共に「本物はもっときれいだよ」とのメッセージ。

報瀬ちゃんはそれを見て笑顔で一言。

 

「知ってる!」

 

気づきましたか、みなさん!

12話で「Dearお母さん」に始まるモノローグがあったじゃないですか!

あの最後、報瀬ちゃんは「私が今見ている風景を、お母さんも見ていましたか」と問いかけるじゃないですか!

 

見ています、今まさに!

 

母が見て、きれいだと心動かされた光景を、

報瀬ちゃんが目撃する瞬間がこのアニメの大団円でした。

 

さらには母が消息を絶つ間際に放った一言、隊長が無線越しに聞いた一言の意味!

「きれい、、すごくきれい」

あれは間違いなくオーロラを目撃しての感想に違いないです。

 

こんなきれいな終わり方のアニメ、滅多に会えるものじゃないですよ。

 

いやほんと、ここまで完璧なアニメがあっていいのか。

今期No.1どころか、今年のベスト5には間違いなく入るだろう。

 

そう思っていましたが、

続きがありました!

 

またもめぐっちゃんです!

5話でキマリちゃんと決別したはずのめぐっちゃんが、です!

 

キマリちゃんは日本到着と共に一人で地元に帰ることを宣言します(ここもみんなと感傷的に別れないところがいい!)。

そして、真っ先に絶交を言い渡された友人、めぐっちゃんに連絡を入れます。

 

彼女の迎えが来ると思うじゃないですか、普通。

5話でできなかった和解のシーンがあると思うじゃないですか。

 

めぐっちゃんからは画像と共にこんなメッセージが

「残念。私は北極だ」

 

5話では、キマリちゃんとめぐっちゃんの自立を同時に描きました。

最終話でも同じ構造で、互いのわだかまりを解消する場面を描きました。

 

こんな変化球許されるのか!

もう完封負けです。

 

あのめぐっちゃんが、自分の葛藤をそんな形で解消するとは!

ここでキマリちゃんは5話で放ったのと同様のセリフを放ちます。

「なんで!!なんで!!」

 

こんな贅沢な構成ありませんよ。

最後まで笑わせて泣かせるとは、ほんと最初から最後まで企みに満ちた傑作だと思いました。

見せ方が本当に上手く、何一つ後腐れなく、すっぱりと幕を下ろしてくれました。

 

心地のいい疲労感と共にまとめ

ただただ思いのたけをぶつけただけで、到底批評と呼べる産物じゃありませんが、

いちファンの熱烈な推薦状と捉えていただければ幸いです。

みなさんもぜひ、胸を張って「宇宙よりも遠い場所」を布教していってください。